佐藤栄作論文賞 応募作

 

『経済的視野で見た核兵器廃絶の為のピースマネーの創出について』

 

本名 飯沼 孝行(昭和45年=1970年7月28日生まれ)

国立埼玉大学教育学部小学校教員養成課程社会専修(専門履修科目の略称)平成2年度一般入試合格 平成6年度卒業

 302-0117 茨城県守谷市野木崎1206ー3在住

筆名=ペンネーム 篁 石碁(嘗て 篁 涙で学研ムーへ論考提出)


 戦争。戦争と経済は不可分だ。国民の生活を豊かにする事を本願とした為政者が、侵略戦争を起こしてしまう。そこに、宗教としての大義名分が関与してくる。

 基本的に、戦争とはこのテーゼの元で起こされると言ってもよいでしょう。

 国際社会、国際経済の中で、多種多様な民族国家が、相関関係を構築し、支え合って行く現代で問題となっているのは、地球を何回も破滅させるだけの威力を持った大量破壊兵器である核兵器が、国際社会において地球人民の安全生活を脅かす存在として、脅威であり続けるという事です。

 兵器自体が、その核理論が、永遠性を主張するかの如く、戦争抑止論においての安全神話の中でアンチノミーとして存在する事に問題があるのです。

 この論文の主題は、恒久的な平和安全保障システムの可能性の中で、国際連合がどういう役割を果たせるかという事に、小生独自の視点から、論じてみる、一考察にしか過ぎません。

 まず、私が申し上げておきたいのは、人を信じる事。そして、その人と人との関係性を

持続して行こうとする、関係存続の安全性を追求する試みを信じて動く事。

 そして第三者の視点から、そこに平和の可能性が存在するかという事の、客観的かつ、

総合的な社会学問である、地理的な、即ち、地政学を悪に利用されるのではなく、国際分業による認識をした上での、国際連合という超国家的な立場で論じる存在の必要性であります。

 そこに一民間人として、今はまだ私論にしか過ぎない、小生の見解をぶつけたみたいと思いで、この論文を書いている次第であります。

 

 小生が、核兵器廃絶の為に申し上げたい具体策は、三つあります。その一つは、イスラム社会で、核兵器開発に投資されている軍事費を、為替レート、国際価値の下落はしているとは言え、ドルとの交換比率で、1対1の固定相場にするという事。それは、イスラムの資産をアメリカ資本で固定するという、ペッグ制度の理論です。

 ペッグ制度とは、特定の通貨と、自国の通貨とを連動させる為替制度です。

 アルゼンチンの例で言えば、1ペソ=1ドルに為替固定して、為替変動リスクをゼロにした上でアメリカからの投資を得て、ドルとの為替固定は、インフレを沈静化させました。それに伴い、年平均5%の経済成長率を実現しました。

 アルゼンチンの場合、ブラジルが通貨切り下げになった為に、ドル換算でアルゼンチン

製品の方が割高になった訳ですが、輸出が大幅な打撃を受けて、政府財政の困窮に伴う、

債務不履行に陥った経緯があります。

 アシアやブラジルの通貨危機の影響を真面に受けたアルゼンチン。通貨切り下げを行うと、自動的にペソに換算した借金が膨らみ、変動相場に切り替えると、借金が増大してしまったのです。

 現在では、国連の機関である、国際通貨基金、International Monetary Fund、通称、IMFが、変動相場制の潤滑な運営を目的として、機能しています。

 ドルが倒れれば、共倒れとなる理論ではあります。サブプライムローンで大打撃を受けて失速したアメリカ経済とアメリカドルの価値の下落が起こっていますが、逆に、世界経済で、消費者物価に重要なファクターとなっている石油を産出するイスラム世界のオイルマネーの一部を、核兵器開発に回させるのではなく、軍事費分だけをペッグ制度で交換し、武器輸出で外貨を稼ぐのではなく、1対1のドル換算で、言わば、ピースマネーを得る事で、軍事費の永久放棄である、平和政策を取って頂く事で、アメリカとイスラムの経済補完関係を構築する目的なのです。

 OPECの減産政策などで、消費者物価を調整する現在、もし、石油が枯渇したら、消費者物価はインフレとなってしまいます。固定為替相場にしたらインフレを助長する事になりますが、あくまでも軍事費分のみのペッグ制度なのです。

 石油枯渇が、核戦争へのターニングポイント。イスラム社会のオイルマネーの失速が合図となるかもしれないのですから、ペッグ制度に切り替える必要性は十分にあると思います。

 またアメリカ側からすれば、ドルの価値の下落を食い止める為にも、ある時期にイスラム社会とのペッグ制度、また、協定を結んだ国々(此処ではOPEC。それから発展したAU。アラブ連合の可能性)との間で基準レートを決め、一定幅の中に取引レートを収めようと相互に協力するグループ内相互連動制でも、イスラム諸国とアメリカドルと連動を行う事が出来ると思います。

 輸出に大打撃を受けたアルゼンチンですが、産油国のイスラム国家では、輸出品が、石油なので、製品競争力の問題ではありません。

 然も石油価格は、OPECで調整出来るのですから、アルゼンチンの二の舞いにはならないように思います。

 資本主義諸国へ輸出する事で、外貨を稼ぐのがイスラム産油国なので、オイル・ダラーとも言われるオイルマネーとしての価値を安定させる意味を含めて、これから起きるかもしれない最終的なオイルショックを乗り切る事で、イスラム諸国との核戦争を回避する道を選んだ方がいいと考えるのであります。

 では通貨危機の問題はどうか。実態以上に通貨高で、いずれ切り下げをしなければならないのだとしたら、それを行うメリットはある所か、百害あって一利なしでしょう。

 それはペッグ制度より、グループ内相互連動制を行い、IMFによる監視体制をきちんとする事で回避出来ればと思います。

 産油国全体、OPEC(石油輸出国機構)としての枠組み。石油枯渇での石油価格暴落で、イスラム経済に大打撃を与えないように、核開発の疑惑が付きまとう、イランを想定して、今まで通りIAEAの通常査察を受け入れて頂く。

 OPECは、原油価格の決定権を握っていました。中東との戦争で、原油価格の高騰、経済のダメージとなるシナリオなら、戦争回避のプログラム作り、経済における戦争への発端を無くし、最近始まった石油先物取引市場での投資で、経済を混乱させるより、石油価格の安定と、ドルの立て直しの為の、ドルとイスラム諸国との軍事費分のみの固定為替を考えたらどうかという提案なのです。

 最近は、原油の先物市場が開設されています。投機的な金融市場との多様化で、原油価格が混迷しておられるようです。

 ですから、そこに一本の大黒柱を平和的に導入する事。OPEC(2009年1月に、インドネシアが加盟停止となり、加盟国は12ケ国)に、世界最大の原油生産量を有しているロシアの加盟を、国連を通して働きかける事だと思います。

 当然の事ながら、国際連合のIMFによる通貨危機の回避。

 1987年のブラック・マンデーで露呈した、相場決定能力の無いドルを、再び強いものとして、イスラムと戦争の懸念のあるアメリカを、坂本龍馬的な、言わば、リョウマイズムとも言うべき、矛盾の止揚で結合させ、手を取り合って危機を乗り切る体制を作り上げ、車製造業が大打撃を受けた原因、ガソリン価格の高騰を招いた、2003年の対イラク戦争から始まる、アメリカの基盤産業である車製造業へのダメージを再興する為に、イスラム諸国家軍事費分のみの固定為替取引で、イスラム諸国家の通常の経済に影響を与える事をヘッジする。原油価格の安定で平和を作り出す事の今までの理論の応用を固定化する事での平和作りなのではないでしょうか。

繰り返す通り、武器輸出での外貨獲得から切り替えた、ピースマネーの創出で、イスラム諸国家から、貧困の結果、引き起こされるであろう戦争への意思を失くして頂く事であると思います。

 その時はイスラム諸国家が軍事費を増額するのを監視。中央銀行のドル建ての外貨準備金として保持して貰うのです。

 そうすればピースマネーは、イスラム国家の政府の有する外貨準備金となり、イスラムから始まる通貨危機はヘッジ出来るのではないでしょうか。

 

 金本位制度の崩壊で、ドル=アメリカ、基軸通貨国である体制は崩壊したとも言われます。それをこのグローバリズムの世の中で、基軸通貨としての大黒柱を欠いては、経済は失速するのは言うまでもありません。

 ユーロが出現した今、ドルからユーロへ。そのアメリカの失速で、国連に多額な資金を出資しているアメリカの衰退。世界の軍隊の権威の失墜。テロリズムの横行。そして、最終戦争への悪のシナリオが描かれてもおかしくないのです。

 ですから、イスラムとアメリカのパイプを基軸としながら、ユーロとアフリカの関係構築も見据えるべきだと思われるのです。

 2005年度、アメリカの経常赤字は7290億ドル。それをファイナンスする形で、アメリカへの証券投資額は8450億ドル。だから、もし、アメリカの国家財政が破綻して、債務不履行になったら、一気にアメリカバッシングは始まってしまいます。

 二番目の提案への布石とする為に、第一の論点を纏めておくと、核開発をする国の軍事費をピースマネーに変えて、IAEAの査察の無条件受け入れを推進する事。それが一番目の提案の主眼であります。

 そして、再び強くなったアメリカドルを欲しがる、世界中の投資がイスラムに集まり、オイルマネーが得られなくなった後の、イスラムの産業を立ち上げる事が出来るのです。

 

 悪のシナリオからの脱却の二番目として、平和年金システムです。平和保険と言ってもおかしくありません。

 つまり、何らかの要因で経済不況に陥った時に、その恐慌から脱する為に、軍需産業の

活性化による経済政策の一環としての、悪の戦争でした。

 世界大恐慌から、自国と植民地間の貿易だけを優遇し、それ以外との貿易に関税を掛けるブロック経済の果てに、世界経済がブロックに寸断され、第二次世界大戦へと悪の連鎖が続いたのです。そこで戦争特需で、経済を潤沢にしようとした経緯があります。

 此処で、その言葉を出すのは憚られるのですが、ノストラダムスの大予言の言葉、あの有名な『1999年 7の月・・・・・・』の預言詩で、『・・・・・・マルスは幸福の名の元に支配するだろう』とあります。それは、火星(Mars)のアナグラム、言葉のスペルを入れ替える暗号で、Isram。イスラムが、戦争を起こして、戦争特需で経済が潤うだろうとの未来予測だった解釈も存在したからでしょう。

 ですから、その戦争特需の為の軍需産業の肥大化をさせるのではなく、戦争で利益を得るのではなく、平和でお金が入ってくるシステムに変える。それこそ、平和保険なのです。  平和保険で、保険料を国連に支払い、それを国連の潤沢な資金としていく。

 今までなら、国連分担金という名目で、国連運営の為に、国連加盟国が経費を負担していました。分担金の未納・滞納で、国連財政の危機が存在しています。

 それに対しての一提案としての、平和年金システム。

 そこに国際紙幣の概念を訴えます。何処でも通貨として使用出来る、国際紙幣を発行出来る権限を国際銀行に与え、それを平和年金として世界市民に分配する。

 一番目の提案に関係しますが、金本位制度から、第三社会での国際通貨としての紙幣発行機能を国連に持たせて、発展途上国でよく行うペッグ制度で、発展途上国への投資を高める。

 つまり、国際紙幣として出現してくるであろう、ドルとユーロの統一通貨とされた『ユーラー(仮称)』、もしくは『ドーロ(仮称)』と、1ドル=1ユーロを、国際紙幣1ユーラーで、レートを固定し、丁度、決済のみにユーロを使用していた、通貨統合前のヨーロッパのように、国際通貨としての大黒柱にしていく。国際通貨の外貨準備を発展途上国に持たせ、国際収支の赤字を穴埋めする。そうして、発展途上国の国家財政を支えて行く。

 ピースマネーの創出で、ユーラー建ての外貨準備に充てた、ペッグ制度の金額の一部を、イスラム諸国家や、発展途上国からの保険料として引き出せれば、アメリカが国連に出資しなくても、自動的にファイナンス(補填)出来ます。

 自国の年金体制に依存しない、国連主導のサスティナブル、持続可能な平和年金システムが形成出来るのです。

 

 そして、商品券の応用で、平和保険料で徴収したお金で、商品券のような国際紙幣と兌換する。

 商品券の利益が出る仕組みとは、Aが1万円の商品券を発行して1万円の利益を得て、購買者がBで使用すると、3.5%引いた、9650円がBに支払われます。つまり、Aには、350円の利益が出る訳です。

 つまり為替変動で、固定で兌換すると差額利益が出ませんが、商品券の利益が出る仕組みなら、必ず固定の利益が出ます。その紙幣の使用量で、流通量で利益が出てくるのです。

 つまり、各国の年金総額がどれだけかは、現段階で把握出来る立場に居ませんが、年金保険料を国際紙幣に兌換して、それを分配する時に、その3.5%が国連の利益になるので、その保険料の差額3.5%分を国連の運営資金として、成立させて行く事も可能ではないでしょうか。年金運用とは別の、国際公務員の人件費にも充てられます。NGO、NPOの活動支援も出来る筈です。

 核開発を行っている国々には、その紙幣の流通をストップさせ、核兵器廃絶を後押しする。 

 その年金額の配分を、国連が請け負い、平和で安全な生活を保障する事が出来ます。

 国連に巨大な保険機構を作り、軍需産業を合体させ、軍需産業を管理して、核開発に転用出来る技術や製品の流出を防ぐのです。

 軍需産業が戦争で利益を得るのではなく、保険料で利益を得て、その資金を利用して、国連の常設国連軍を整備する役割に変化させる。

 そしてその巨額な資金で平和年金を捻出するのです。

 

 そして第三の論点。北朝鮮問題です。核兵器廃絶の為の、核拡散防止条約。NPT。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の五カ国以外の国が、核兵器を保持しないという、NPT体制の危機こそ、問題の核心になるのでしょう。そのNPTから北朝鮮は脱退をしています。

 では北朝鮮との調停の為に、国連に出来る役割とは小生の試論ですが、どうなるでしょうか。

 まず、南北コリアの統一へのプロセスから論述したいと思います。

 最初に在韓米軍の撤退。そして韓国の徴兵制度の撤廃。そして北朝鮮の軍隊を韓国に駐留させ、その軍隊を韓国の軍事費で賄い、北朝鮮の浮いた軍事費を民間経済支援に回す。そうすれば、アメリカ主導での経済支援というより、統一コリアとしての自主的な経済復興を成し遂げられます。そしてその時は、アメリカ・日本との平和友好条約の締結。そして、NPT再加盟です。

 そしてどう、統一コリアを成立させるのかは、ダブルカントリーの理論。統一までのプロセスとして、国連にはサウス・コリア、ノース・コリアで加盟した上で、両者の統合政府を置く。両国で選挙を行い、二つの議会政府を置く。それを、与党と野党に位置付けて、任期を与えて、主導権の交替をする。大統領制度としての行政府を置いて、二つの政党政治の天秤を調停する、保守中道の行政府。

つまり日本の神道で、伊勢神宮の式年遷宮の理論です。二つの議会、二人の首相を置き、交替で統治し、予算の配分を行う。

 北朝鮮では、共産党としてノース・コリアでの議会を運営していき、中国と香港、マカオ等の一国二制度(共産主義と資本主義)の経済システムの併存から、民主主義と共産主義をそれぞれの政党として、両国を運営して行く事で、政治システムを統合する。

 つまり、一党独裁を許さない民主主義で、ノース・コリア=共産党、サウス・コリアとしての政党政治として運営し、北朝鮮の場合は、共産党に政権を運営して頂く。そして、両国の統合議会を上位に置くシステムです。

 そして、最恵国待遇としてのFTA(自由貿易協定)を発展させた、EPA(経済連携協定)を締結し、人の移動、お金の移動の自由化、知的財産の保護、各分野での技術協定を結ぶ事だと思います。

 

 資本主義と共産主義。そしてユダヤ・キリストとイスラムの構図。従わない国は、戦争で倒すという二元論的な闘争と、それを調停しようとする国際連合の構図です。

 そこに核兵器という現段階で最強の兵器の保持の問題に係わります。

 核兵器を全廃するには、NPT非加盟国に核兵器を開発させない事。そして、従来通り、核開発を放棄した国々には、経済援助という救いの手を差し伸べる事です。

 第三の手段を探るポスト・モダンのやり方で、単なる地方大学の教育学部出身で、国際政治学については無学の小生が、アマチュア小説の中に織り込んだ独自の見解を、高名な論文コンテストに送らせて頂く事、それ自体、烏滸がましい事であるとは思います。

 正解という道は一本道。それは平和の存続という一点につきます。しかし、どの政策が正解なのかは、行ってみなければなりません。しかし、間違いの許されない政策で、小生のアイデアが何処まで、国際的に通用するかは未知数ですが、一人でも多くの方に、小生の見解を知って頂いて、それを自分の今後の執筆活動に生かしていければと思っている次第であります。

 最後に、日本には、素粒子物理学の総本山、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)のトップを10年以上も務めた、菅原寛孝氏(現・総合研究大学院大学理事)というお方がおられて、ニュートリノを使って地球上の何処にあろうと、核兵器を無力化出来る方法を考案されています。(『全核兵器消滅計画』中嶋彰著・講談社)

 その理論を元に、国連でも研究し菅原氏の御指導を仰ぎ、その実現の為に世界各国の賛同を得る事が出来れば、最強の兵器は無力化し、核の支配から解放されます。

 またその理論を広めるだけで、核兵器の研究開発自体が意味のないものになります。

 イランでは、2010年2月9日現在で、ウランの20%濃縮を開始する事を発表したそうです。IAEAの提案を受け入れずに、このまま核兵器の開発を進めては、核兵器廃絶の道はほど遠いです。

 ですから、一刻も早い解決案を提示する為にも、様々な多角的な視野から見た可能性を探るべきではないでしょうか。

 単なる経済制裁ではなく、軍事費のみをペッグ制で、ドルと為替連動して、オイルマネーで左右される消費経済の立て直しを行う事も、一つの視野に入れて頂きたいのです。

 核兵器開発の為の莫大な軍事費を為替固定し、それをピースマネーとして外貨準備金として、政府の国際信用度を増して、ソブリン格付けで、ランクが低くなっている国の債務履行能力をアップさせる。それが本論文の主眼のテーマであります。

 『経済的視野で見た核兵器廃絶の為のピースマネー創出について』であります。

 

 以上、国際連合がどう核兵器廃絶に向けて動けるか、その役割を私論に纏めながら、最後に、学術的な廃絶方法論の著作物を知っている日本人として、論述させて頂きました。

 

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